き花――文学館オリジナルパッケージ、誕生!

6月13日の開館記念日に、新たな「おみやげ」が誕生しました。
壺屋総本店さんの銘菓「き花」(きばな)。香ばしいアーモンドガレットに、ホワイトチョコをサンドしたお菓子で、私も子どものころから親しんできたスイーツです。
三浦文学館オリジナルパッケージは3種類で、デザインは、旭川市在住の齋藤玄輔さん。
やわらかいタッチで、心がほんのりあたたまる、素敵なデザインです。

さて、「き花」とは珍しいネーミングですが、その原典は、齋藤瀏の第二歌集『霧華』(1929年)に由来するとか。軍人で、第七師団に二度赴任した、旭川ゆかりの歌人です。
「きばな」は、現在でいうダイヤモンドダスト現象のことですが、そこに「霧華」の漢字をあてたのが齋藤瀏だったのですね。エッセイに、次のように書かれています。

「霧華とは、一般には霧氷又は樹氷などとかかれて居る『きばな』に私が宛てた文字である」(「旭川の四季」)

そして、齋藤瀏は、北国の神秘的な冬の姿をさまざまに歌っていたのでした。

・霧にそまりあかあかと陽はのぼるなり霧華凝(こ)りたる森に沁みつつ

・ほのかなる光となりて降りにけり大木の霧華おのづから散り

・すみ深き星夜の空にぬきいでて木々の霧華のおのれ照りたり

歌人・齋藤史は齋藤瀏の娘ですが、父娘二人で、霧華の美しさに心ひかれていたさままで想像されます。

ところで、「き花」は大きさが2つあり、三浦文学館のものはミニサイズのほうです。4枚入り350円とお手頃なので、ちょっとしたプレゼントなどに、どうぞ。

田中 綾

 

※参考文献……石山宗晏・西勝洋一『道北を巡った歌人たち』旭川振興公社、2013年

全国の文学館―資料の宝庫と、その活用

どさっ。

私の郵便受けには、毎日さまざまな本、文芸雑誌などが届けられます。1年に、単行本で100冊(!)、雑誌で300冊は増えていくでしょうか。ありがたいことですが、置き場所に困ることもしばしば。三浦家のように広い書庫があればいいのですが……

さて、先日、ずいぶん重い封筒が届きました。中身は、日本近代文学会『日本近代文学』第100集と、その別冊『近代文学研究における〈資料〉の活用』。

日本近代文学会http://amjls.web.fc2.com/は、私も一会員ですが、まずは「100集」刊行、55年もの長い活動に何より敬意を。さらに、その節目の集の別冊に、全国の文学館・記念館アンケートが収録されたことを嬉しく感じています。

別冊冊子には、全国174館の資料情報、展示企画などが掲載され、三浦綾子記念文学館も、しっかりと23ページに掲載されています。旭川にある「井上靖記念館」や、和寒町にある「塩狩峠記念館」なども掲載され、文学館・記念館が、北海道の観光スポットとしても機能していることがうかがえます。

観光スポットとしての文学館の機能は、今後ますます求められていくと思いますが、それと同時に、文学研究者に資料活用を促すこともやはり文学館の大切な役割でしょう。

文学の研究活動にとって、〈資料〉は生命線です。その大切な資料を扱い、保管し、必要に応じて的確に提供する文学館の役割を、あらためて感じています。

さて、最後に予告を。

そのような全国の多くの文学館に先駆けて、三浦綾子記念文学館は、今後、まったく新たな企画を実現していきます。

・三浦綾子ARアプリ https://www.hyouten.com/miura-ayako-ar-app

・綾コレカード https://www.hyouten.com/aya-colle

・オーディオライブラリー https://www.hyouten.com/audio-library

え、何これ? どういうもの?? ――どうぞ、ご期待ください!

田中 綾

三浦光世の短歌 企画展「愛の短歌・夫婦生活40年」

今、文学館2階第四展示室では、企画展「愛の短歌・夫婦生活40年 光世のまなざし、綾子の横顔」を開催中です(6月9日まで)。
今年は三浦綾子没後20年ですが、同時に、結婚60年にもあたる年です。お手洗い以外はいつも一緒(!)とも言われた光世・綾子夫妻ですが、そのような間近で、光世さんは、どのような綾子像を短歌で表現していたのでしょう。

展示では光世短歌14首をパネルで掲げ、私も「ワンポイント解説」をさせていただきました。堀田(三浦)綾子短歌とともに、光世短歌もこれまで繰り返し読んできたのですが、あらためて、新鮮な目で短歌を味わうことができました。

たとえば、出逢ってから結婚にいたるまでのこの一首。

・旅の終りの今朝吾が見たる夢淋し生きよと三度君に告げゐつ(1957年作品)

朝方の「夢」は、どんなに淋しい夢だったのでしょう。おそらく、「君」=綾子さんの健康状態が思わしくなく、悲痛な思いにかられ、「三度」も「生きよ」と強く告げたくなったのでしょう。短歌という詩形では、数字は重要なもので、目を引く言葉でもあります。この歌でも、「三」という数字の存在感が際立っています。

また、結婚して三浦商店を開き、忙しく立ち働いていたころの一首。

・今年最後の夕日です共に見ましゃうよ店に客絶えし間を妻の寄り来る(1962年作品)

光世さんの短歌には、綾子さんが話した言葉がそのまま詠み込まれたものもあり、その言葉が、実に生き生きと光っています。この歌でも、「共に見ましゃうよ」という、さりげない言葉が光っていますね。「今年最後の夕陽」の美しさを二人で共有したい、という願いが、臨場感をもって伝わってきます。

短歌は、五七五七七というとても短い詩型ですが、一冊の小説にもなりうるような小宇宙を秘めていることもあります。ぜひ、深く味わってみてください。

田中 綾

中国で、三浦綾子を読む

2019年3月23日と24日、中国の雲南大学本部で開催された、「第2回中日国際日本語教育研究大会」(主催:雲南大学外国語学院 共催:雲南日本語研究会)に参加しました。3年前の第1回大会以来、久しぶりの中国訪問です。

雲南省には多くの大学があり、この大会は、日本語学の研究者や、日本語を学んでいる学生・大学院生との研究交流の場です。国際学会ですが、すべて日本語で進行するので、語学が苦手な私にはありがたい機会でした。

初日は全体会で、2日目は分科会。第三分科会「文学」で、私は三浦綾子の小説についてお話をさせてもらいました。

約20人の参加者のうち、三浦綾子の小説を読んだことがあったのは2,3人。とはいえ、中国でも翻訳はなされています。

『氷点』『続氷点』→『冰点』『冰点2』

『泥流地帯』『続泥流地帯』→『十勝山之恋』

『青い棘』→『緑色棘刺』

『明日をうたう』→『熱愛明天』  など

それらをマクラに、綾子さんの来し方、自伝的小説の紹介、55作の小説のジャンル、語りかたなどにふれ、最後に『母』の話でまとめました。小林多喜二は中国でも知られていますが、小林多喜二の母・セキの生涯は知られていないので、興味深く耳を傾けてくださっていました。

さて、せっかくなので、雲南名物グルメ・あつあつスープ麺をご紹介しましょう。

名物の「過橋米線(グォチャオミーシェン)」は、手ごろな値段で味わえます。「米線」はビーフンのことですが、橋を渡る、というネーミングに中国ならではの意味があるそうです。

その昔、橋の向こうで科挙の試験勉強にうちこんでいた夫に、妻が、あつあつのスープ麺を運んでいたことが、ネーミングの由来だとか。豚肉、野菜、卵、きくらげなど栄養たっぷりで、これなら試験も合格できそうですね?

綾子さんの小説も、国境という橋を渡って、あつい想いを届けられるといいですね。

田中 綾

ゼミで『塩狩峠』を構造分析

勤務校のゼミで、三浦綾子の小説の研究に取り組んでいます。今年度は『塩狩峠』(新潮文庫版・79刷を使用)を精読し、章ごとに、その構造をゼミ生とともに分析しました。

分析した項目は、 「とき(時代、時間)」「場所」「語り手・人称」「登場人物とその情報」「語られたこと(開示された情報)」「語り・文体の特徴」「時代背景(明治期の風俗)がわかる描写や、用語の解説」「登場人物や、人間関係における葛藤の場面、会話など」「キリスト教や聖書に関する情報」「食べ物の描写」「植物」「動物」「色彩」「オノマトペ」「その他」 の、15項目です。

三浦作品に「オノマトペ」(擬音語・擬態語・擬声語・擬情語)が多いことは、構造分析をすると一目でわかります。 『塩狩峠』冒頭の「鏡」という章だけでも、

・きりっと(p5) ・ゲッ、ポロポロ、がっしり(p6) ・ぴたり(p7) ・ガタゴト(p8) ・もじもじ、すべすべ、つるつる(p10) ・ぐずぐず、こっくり(p11) ・にっこり、そっと、バタバタ、(p12) ・ピリリ(p14) ・ポカン(p16) ・くしゃくしゃ、しょんぼり(p17) ・いらいら、さっと、うろうろ、きりり(p18) ・おどおど、ひりひり、むすっと(p19) ・きりり、ピタリ、おろおろ(p21)

などが用いられているのです。

オノマトペは、絵本や児童の読みものにも多用されていますが、その効果は何でしょうか。オノマトペを用いると、情景がイメージしやすくなり、情報伝達のスピードも速くなるのです。 「三浦綾子の小説におけるオノマトペ」のテーマで、卒業論文を書く学生の登場を期待していますが………挑戦してみませんか?

※『塩狩峠』構造分析の成果は、ゼミ誌『A207』第10号(北海学園大学人文学部Ⅰ部 田中綾ゼミ)に収録し、7月7日開催の「第4回文学フリマ札幌」で販売します。よろしければ、お手にとってご覧ください!

田中 綾

2000年代生まれの学生と、三浦綾子

ちょっと、ショックな数値です。
2018年11月に、勤務先の大学の「日本文学史Ⅱ」(近・現代の文学史)という授業で、アンケートを行いました。質問は、ずばり「三浦綾子の作品を読んだことがありますか?」。
受講生は、人文学部の1~4年生で、142人から回答がありました。結果は――

三浦綾子の作品を
→ 読んだことがある・・・10人 (7%)
→ 名前は知っているが、読んだことはない・・・66人(47%)
→ 今回初めて聞いた・・・64人(45%)
→ 回答なし・・・2人(1%)

「三浦綾子」の名前を知っている学生が、とりあえずは半数を超えてはいるのですが、「今回初めて聞いた」も「45%」と半数近く、これが2000年代生まれの学生の傾向か……と、現実をつきつけられました。

「読んだことがある」学生には、作品も聞いてみました(複数回答)。

『氷点』6人
『塩狩峠』5人
『続氷点』1人
『天北原野』1人
『積木の箱』1人
『泥流地帯』1人

わりと幅広く読まれており、とくに『塩狩峠』は、朗読やアナウンスの練習に使われているという嬉しいニュースも。
知らないならば、伝えましょう! ということで、最終日には「特別講義・三浦綾子」を行いました。知る/読むきっかけ作りに、いっそう力を入れたいと感じています。

田中 綾

頌春 オーディオドラマから始まる、春

初春を迎え、みなさまの御多幸をお祈り申し上げます。

昨年は、分館オープンはじめ、開館20周年記念イベントが目白押しでした。その1つ、上富良野町との連携事業『泥流地帯』オーディオドラマの配信、もうお楽しみいただけましたでしょうか……?
このドラマは、朗読劇団「くるみの樹」の第2回公演を収録したものですが、「くるみの樹」は、三浦文学館のボランティアの方々と案内人の方々による、手作りの“文学館劇団”です。結成は、2018年4月。20人余の“生の声”で、三浦綾子の作品をダイジェストでお届けしますが、登場人物それぞれに名セリフがある三浦作品だけに、演出もドラマティックになされ、感激を誘う仕上がりになっています。
『泥流地帯』のオーディオドラマは、昨年12月からyoutubeで配信が始まり、1月5日(土)には、第5回目の動画も配信されます。

そして、今年は、下記の通り大型公演を予定しています。スタッフ一同、練習に力を入れておりますので、どうぞご期待ください!
・2019年5月25日(土)午後1時~ 『天北原野』
・2019年6月1日(土)午後1時~ 『天北原野』

【参考】『泥流地帯』オーディオドラマ
第1回配信 https://youtu.be/NWBYgaULZjM
第2回配信 https://youtu.be/LS-p99HhNvA
第3回配信 https://youtu.be/9cNyljlFlt0
第4回配信 https://youtu.be/x97E4Zn2B3c

田中 綾

小中高校生、入館料は無料です! ――青少年育成事業のいっそうの推進に向けて

三浦綾子記念文学館ではさまざまな事業を行っていますが、私がおもに関わっているのが、「青少年育成事業」です。若い世代に向けた文学的啓発のための事業ですが、さっそく、この1年を振り返ってみましょう――

1年のお正月明けは、「三浦綾子作文賞」の表彰式から始まりました。来年で20回目を迎え、小中高校生の読書感想文のほか、自由作文も募集しています。

7月には「第2回文学フリマ札幌」(@さっぽろテレビ塔2F)に出店し、朗読劇の台本などを販売しました。おかげさまで完売に近く、近くに出店した大学生はじめ、若い世代とも交流ができました。来年7月7日(日)の開催も今から楽しみです。

11月には、「全国大学ビブリオバトル北海道地区決戦B」を開催。道内4大学から5人の発表者(バトラー)がお気に入りの本を紹介し、大学生が読みたい/薦めたい本の傾向もうかがえました。ちなみにこの日のチャンプ本は、映画化でも話題の、志駕晃『スマホを落としただけなのに』(宝島社文庫)でした。

来年2月23日(土)には、「高校生弁論大会」が開催されます。ビブリオバトルは「5分間」で本を紹介しますが、弁論は、「7分間」でしっかりと主張し、聴衆に想いを共有させる競技。ビブリオバトルとの話し方の違いが、興味深いところです。

さて、9月の分館オープン以降、入館料が変更になりました。小中高校生は、まったくの「無料」になったのです(以前は、小中学生100円、高校生は300円)。

文学館2階の図書室で読書を楽しんだり、分館の多目的室で受験勉強(?)など、何度でも、自由にご利用いただきたいと思います。Wi-Fiも素早くつながり、調べ学習もできますよ。次の世代への継承に向けた青少年育成事業は、今後、よりいっそう進めていきたいと願っています。

それでは皆さま、楽しいクリスマスを、そして、良いお年をお迎えください!

田中 綾

直木賞作家・桜木紫乃さん

11月17日(土)、開館20周年記念イベントとして、直木賞作家・桜木紫乃さんと、三浦綾子文学賞受賞作家の河﨑秋子さんをお招きすることができました。旭川市民文化会館で、桜木さんの講演会(聞き手:大津桃子さん)と、桜木さん&河﨑さんの対談が行われます。

以前(2013年)、桜木紫乃さんの小説について、書評コラムでご紹介したことがありました。

湿原に凛と硝子の葦立ちて洞【うつろ】さらさら砂流れたり      桜木紫乃

連作短編集『ホテルローヤル』で、第149回直木賞を受賞したばかりの作者。そのホテル名は、3年前刊行の長編『硝子の葦』(新潮社、2010年)にも登場していた。掲出歌は、『硝子の葦』の人物幸田節子が作った歌である。
節子は30歳。夫の喜一郎は、親以上に年の離れたラブホテル経営者だ。「金と暇をやるから好きに生きてみろ」というプロポーズのままに、節子は3人目の妻として迎えられる。とはいえ、実は喜一郎と、節子の母とは長い愛人関係にあった。
(中略)
ジャンルとしては、クライムノベル(犯罪小説)など広義のミステリーなのだろうが、私は働く女性たちの群像劇として注目した。たとえば、ホテルの管理をとりしきる女性の、比類ない働きぶり。また、家族の介護を抱えつつ、会計事務所で目配り良く働く年配の独身女性。さらに、若き日に単身でスナックを開業した節子の母の生。誰もが、為すべき事としての仕事をこなしている。各人の生をおろそかにせず、丁寧に筆を進めた作者の思いも感じられた。
スリリングな展開に心拍数を上げつつ、舞台である釧路、厚岸、帯広の四季の風景描写には心が和む、そんな緩急ある作品だ。
(北海道新聞「書棚から歌を」2013年9月29日掲載)

桜木紫乃さんの小説を、また、河﨑秋子さんの小説を、「働く女性たちの群像劇」として再読することも一興ですね。
11月17日、文学ファンのみなさまのご来場を、心よりお待ちしております。

入場券のお申し込みは、こちらへ(文学館ショップ)

田中 綾

秋晴れの日に、分館(書斎の移設復元)オープン

まず何より、北海道胆振東部地震で被災された方々にお見舞い申し上げます。

今なお(9月30日現在)、不便な生活を余儀なくされている方々がおられ、私が暮らす札幌市も、観光には何も問題はありませんが、すべてが日常に戻ったわけではありません。

9月29日には分館のオープニング・セレモニーも予定していましたが、三浦綾子・光世夫妻であれば、このような時に何をまず第一としただろうか――それに想いをめぐらせ、記念式典等は控え、予算の一部を義援金として被災地に送り届けることを選択しました。

 

三浦夫妻の“口述筆記の書斎”を移設復元した分館は、2年をかけて、全国の方々からの熱い想いとご寄付で完成した建物です。そのお披露目のセレモニーを控えることには、もちろんさまざまなご意見、葛藤もありました。

そんな中で迎えた当日は、さまざまな想いを包み込み、純化させたような秋晴れ……!

道内外、遠方からも、本当に多くの方々にご来館いただきました。ありがとうございます。閉館時間まで駐車場も満杯で、約270人の方々とオープンの日を迎えることができました。

 

新聞等でもさまざまにご紹介いただけましたが(下記)、私は1つ、分館のこの一角をおすすめしたいと思います。

テラスに面し、旭川家具をそなえたくつろぎのスペース「多目的室」。その一角に、携帯電話などを一度に6台充電できる「充電スペース」があります。今回の地震で三浦文学館も長時間の停電となりましたが、何かの際はもちろん、旅行中の方々、みなさまどうぞお気軽にお使いください。ご来館を心よりお待ちしております。

 

田中 綾

 

(参考)https://www.hokkaido-np.co.jp/article/233146?rct=n_culture 口述筆記、この書斎で 旭川・三浦綾子記念館 分館オープン(北海道新聞9月29日23:46更新)

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/232276 三浦綾子記念館 29日分館オープン 書斎移設、「氷点」コーナーも(北海道新聞9月27日12:32 更新)