ゼミで『塩狩峠』を構造分析

勤務校のゼミで、三浦綾子の小説の研究に取り組んでいます。今年度は『塩狩峠』(新潮文庫版・79刷を使用)を精読し、章ごとに、その構造をゼミ生とともに分析しました。

分析した項目は、 「とき(時代、時間)」「場所」「語り手・人称」「登場人物とその情報」「語られたこと(開示された情報)」「語り・文体の特徴」「時代背景(明治期の風俗)がわかる描写や、用語の解説」「登場人物や、人間関係における葛藤の場面、会話など」「キリスト教や聖書に関する情報」「食べ物の描写」「植物」「動物」「色彩」「オノマトペ」「その他」 の、15項目です。

三浦作品に「オノマトペ」(擬音語・擬態語・擬声語・擬情語)が多いことは、構造分析をすると一目でわかります。 『塩狩峠』冒頭の「鏡」という章だけでも、

・きりっと(p5) ・ゲッ、ポロポロ、がっしり(p6) ・ぴたり(p7) ・ガタゴト(p8) ・もじもじ、すべすべ、つるつる(p10) ・ぐずぐず、こっくり(p11) ・にっこり、そっと、バタバタ、(p12) ・ピリリ(p14) ・ポカン(p16) ・くしゃくしゃ、しょんぼり(p17) ・いらいら、さっと、うろうろ、きりり(p18) ・おどおど、ひりひり、むすっと(p19) ・きりり、ピタリ、おろおろ(p21)

などが用いられているのです。

オノマトペは、絵本や児童の読みものにも多用されていますが、その効果は何でしょうか。オノマトペを用いると、情景がイメージしやすくなり、情報伝達のスピードも速くなるのです。 「三浦綾子の小説におけるオノマトペ」のテーマで、卒業論文を書く学生の登場を期待していますが………挑戦してみませんか?

※『塩狩峠』構造分析の成果は、ゼミ誌『A207』第10号(北海学園大学人文学部Ⅰ部 田中綾ゼミ)に収録し、7月7日開催の「第4回文学フリマ札幌」で販売します。よろしければ、お手にとってご覧ください!

田中 綾

2000年代生まれの学生と、三浦綾子

ちょっと、ショックな数値です。
2018年11月に、勤務先の大学の「日本文学史Ⅱ」(近・現代の文学史)という授業で、アンケートを行いました。質問は、ずばり「三浦綾子の作品を読んだことがありますか?」。
受講生は、人文学部の1~4年生で、142人から回答がありました。結果は――

三浦綾子の作品を
→ 読んだことがある・・・10人 (7%)
→ 名前は知っているが、読んだことはない・・・66人(47%)
→ 今回初めて聞いた・・・64人(45%)
→ 回答なし・・・2人(1%)

「三浦綾子」の名前を知っている学生が、とりあえずは半数を超えてはいるのですが、「今回初めて聞いた」も「45%」と半数近く、これが2000年代生まれの学生の傾向か……と、現実をつきつけられました。

「読んだことがある」学生には、作品も聞いてみました(複数回答)。

『氷点』6人
『塩狩峠』5人
『続氷点』1人
『天北原野』1人
『積木の箱』1人
『泥流地帯』1人

わりと幅広く読まれており、とくに『塩狩峠』は、朗読やアナウンスの練習に使われているという嬉しいニュースも。
知らないならば、伝えましょう! ということで、最終日には「特別講義・三浦綾子」を行いました。知る/読むきっかけ作りに、いっそう力を入れたいと感じています。

田中 綾

頌春 オーディオドラマから始まる、春

初春を迎え、みなさまの御多幸をお祈り申し上げます。

昨年は、分館オープンはじめ、開館20周年記念イベントが目白押しでした。その1つ、上富良野町との連携事業『泥流地帯』オーディオドラマの配信、もうお楽しみいただけましたでしょうか……?
このドラマは、朗読劇団「くるみの樹」の第2回公演を収録したものですが、「くるみの樹」は、三浦文学館のボランティアの方々と案内人の方々による、手作りの“文学館劇団”です。結成は、2018年4月。20人余の“生の声”で、三浦綾子の作品をダイジェストでお届けしますが、登場人物それぞれに名セリフがある三浦作品だけに、演出もドラマティックになされ、感激を誘う仕上がりになっています。
『泥流地帯』のオーディオドラマは、昨年12月からyoutubeで配信が始まり、1月5日(土)には、第5回目の動画も配信されます。

そして、今年は、下記の通り大型公演を予定しています。スタッフ一同、練習に力を入れておりますので、どうぞご期待ください!
・2019年5月25日(土)午後1時~ 『天北原野』
・2019年6月1日(土)午後1時~ 『天北原野』

【参考】『泥流地帯』オーディオドラマ
第1回配信 https://youtu.be/NWBYgaULZjM
第2回配信 https://youtu.be/LS-p99HhNvA
第3回配信 https://youtu.be/9cNyljlFlt0
第4回配信 https://youtu.be/x97E4Zn2B3c

田中 綾

小中高校生、入館料は無料です! ――青少年育成事業のいっそうの推進に向けて

三浦綾子記念文学館ではさまざまな事業を行っていますが、私がおもに関わっているのが、「青少年育成事業」です。若い世代に向けた文学的啓発のための事業ですが、さっそく、この1年を振り返ってみましょう――

1年のお正月明けは、「三浦綾子作文賞」の表彰式から始まりました。来年で20回目を迎え、小中高校生の読書感想文のほか、自由作文も募集しています。

7月には「第2回文学フリマ札幌」(@さっぽろテレビ塔2F)に出店し、朗読劇の台本などを販売しました。おかげさまで完売に近く、近くに出店した大学生はじめ、若い世代とも交流ができました。来年7月7日(日)の開催も今から楽しみです。

11月には、「全国大学ビブリオバトル北海道地区決戦B」を開催。道内4大学から5人の発表者(バトラー)がお気に入りの本を紹介し、大学生が読みたい/薦めたい本の傾向もうかがえました。ちなみにこの日のチャンプ本は、映画化でも話題の、志駕晃『スマホを落としただけなのに』(宝島社文庫)でした。

来年2月23日(土)には、「高校生弁論大会」が開催されます。ビブリオバトルは「5分間」で本を紹介しますが、弁論は、「7分間」でしっかりと主張し、聴衆に想いを共有させる競技。ビブリオバトルとの話し方の違いが、興味深いところです。

さて、9月の分館オープン以降、入館料が変更になりました。小中高校生は、まったくの「無料」になったのです(以前は、小中学生100円、高校生は300円)。

文学館2階の図書室で読書を楽しんだり、分館の多目的室で受験勉強(?)など、何度でも、自由にご利用いただきたいと思います。Wi-Fiも素早くつながり、調べ学習もできますよ。次の世代への継承に向けた青少年育成事業は、今後、よりいっそう進めていきたいと願っています。

それでは皆さま、楽しいクリスマスを、そして、良いお年をお迎えください!

田中 綾

直木賞作家・桜木紫乃さん

11月17日(土)、開館20周年記念イベントとして、直木賞作家・桜木紫乃さんと、三浦綾子文学賞受賞作家の河﨑秋子さんをお招きすることができました。旭川市民文化会館で、桜木さんの講演会(聞き手:大津桃子さん)と、桜木さん&河﨑さんの対談が行われます。

以前(2013年)、桜木紫乃さんの小説について、書評コラムでご紹介したことがありました。

湿原に凛と硝子の葦立ちて洞【うつろ】さらさら砂流れたり      桜木紫乃

連作短編集『ホテルローヤル』で、第149回直木賞を受賞したばかりの作者。そのホテル名は、3年前刊行の長編『硝子の葦』(新潮社、2010年)にも登場していた。掲出歌は、『硝子の葦』の人物幸田節子が作った歌である。
節子は30歳。夫の喜一郎は、親以上に年の離れたラブホテル経営者だ。「金と暇をやるから好きに生きてみろ」というプロポーズのままに、節子は3人目の妻として迎えられる。とはいえ、実は喜一郎と、節子の母とは長い愛人関係にあった。
(中略)
ジャンルとしては、クライムノベル(犯罪小説)など広義のミステリーなのだろうが、私は働く女性たちの群像劇として注目した。たとえば、ホテルの管理をとりしきる女性の、比類ない働きぶり。また、家族の介護を抱えつつ、会計事務所で目配り良く働く年配の独身女性。さらに、若き日に単身でスナックを開業した節子の母の生。誰もが、為すべき事としての仕事をこなしている。各人の生をおろそかにせず、丁寧に筆を進めた作者の思いも感じられた。
スリリングな展開に心拍数を上げつつ、舞台である釧路、厚岸、帯広の四季の風景描写には心が和む、そんな緩急ある作品だ。
(北海道新聞「書棚から歌を」2013年9月29日掲載)

桜木紫乃さんの小説を、また、河﨑秋子さんの小説を、「働く女性たちの群像劇」として再読することも一興ですね。
11月17日、文学ファンのみなさまのご来場を、心よりお待ちしております。

入場券のお申し込みは、こちらへ(文学館ショップ)

田中 綾

秋晴れの日に、分館(書斎の移設復元)オープン

まず何より、北海道胆振東部地震で被災された方々にお見舞い申し上げます。

今なお(9月30日現在)、不便な生活を余儀なくされている方々がおられ、私が暮らす札幌市も、観光には何も問題はありませんが、すべてが日常に戻ったわけではありません。

9月29日には分館のオープニング・セレモニーも予定していましたが、三浦綾子・光世夫妻であれば、このような時に何をまず第一としただろうか――それに想いをめぐらせ、記念式典等は控え、予算の一部を義援金として被災地に送り届けることを選択しました。

 

三浦夫妻の“口述筆記の書斎”を移設復元した分館は、2年をかけて、全国の方々からの熱い想いとご寄付で完成した建物です。そのお披露目のセレモニーを控えることには、もちろんさまざまなご意見、葛藤もありました。

そんな中で迎えた当日は、さまざまな想いを包み込み、純化させたような秋晴れ……!

道内外、遠方からも、本当に多くの方々にご来館いただきました。ありがとうございます。閉館時間まで駐車場も満杯で、約270人の方々とオープンの日を迎えることができました。

 

新聞等でもさまざまにご紹介いただけましたが(下記)、私は1つ、分館のこの一角をおすすめしたいと思います。

テラスに面し、旭川家具をそなえたくつろぎのスペース「多目的室」。その一角に、携帯電話などを一度に6台充電できる「充電スペース」があります。今回の地震で三浦文学館も長時間の停電となりましたが、何かの際はもちろん、旅行中の方々、みなさまどうぞお気軽にお使いください。ご来館を心よりお待ちしております。

 

田中 綾

 

(参考)https://www.hokkaido-np.co.jp/article/233146?rct=n_culture 口述筆記、この書斎で 旭川・三浦綾子記念館 分館オープン(北海道新聞9月29日23:46更新)

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/232276 三浦綾子記念館 29日分館オープン 書斎移設、「氷点」コーナーも(北海道新聞9月27日12:32 更新)

 

 

 

ジンギスカンを借景に――三浦綾子作品と「食」その2

北海道大学といえば、『氷点』の辻口啓造、徹、北原、そして陽子も通ったという設定の大学ですね。今年7月、その北海道大学構内にコンビニエンスストアがオープンし、テラスでジンギスカン・パーティー(通称ジンパ)ができることでも話題となりました。

 

北海道民にはおなじみのジンギスカン(羊肉の焼肉料理)。『氷点』でも、徹と陽子、母の夏枝と北原が「ジンギスカン鍋」を味わうシーンがあります。

 

レストハウスに入って、ジンギスカン鍋をつつくころ、旭川の街の灯がまたたきはじめた。夏枝も今夜はビールを飲んだ。

「ジンギスカンはおいしいですね」

北原は陽子をみていった。陽子はだまって微笑した。(略)

「はい北原さん、焼けましたわ」

夏枝が北原の皿に肉をのせた。つづいてピーマンや玉ねぎを皿に分けた。

 (『氷点』角川文庫版 下巻「千島から松」 p181~182)

 

舞台は旭川市の高砂台で、夕陽を受けた大雪山や、十勝連峰も眺められる景勝地です。

とはいえこのシーンは、ただジンギスカンの美味しさを味わうのではなく、北原をめぐる、夏枝と陽子との微妙な関係性が描かれています。一つ鍋を囲む風景を借りながら、登場人物には、ひそかな緊張感が漂っていたのです。

 

『氷点』から18年後、1982年に単行本となった『青い棘』でも、邦腰康郎とその家族が、花見の時季にジンギスカン鍋を味わうシーンが出てきます。

 

なぎさは焼けたマトンを、鍋から自分の皿に移しながら言った。(略)

ここは神楽岡公園である。公園には、花見に来ている人たちが幾組かあった。康郎たちと同じように、ジンギスカン鍋を囲んでいる者、紅白の幔幕(まんまく)を張りめぐらして、踊ったり、歌ったりしている者、様々である。(略)

「ここから見る大雪山もいいですね」

兼介が大きな目を細めて言った。

「ほんとだね」

康郎も肉を焼く手をとめた。     (『青い棘』講談社文庫版、p47~48)

 

こちらの舞台は、上川神社に隣接する神楽岡公園。花見をしながら、家族で囲むジンギスカン――とはいえ、このシーンもやはり、なぎさと兼介夫婦の危機の伏線となっており、一つ鍋を囲む風景を借りながら、家族の微妙な距離が見え隠れしています。

 

さまざまな意味を含む食事シーンを借景に、さて、私もジンギスカンをいただきましょう。

 

田中 綾

幻のお米「あや」との出逢い――大学生とフットパス・バスツアー

暑さが続いていますが、西日本豪雨でたいへんな想いをされている方々に、何よりお見舞い申し上げます。

 

さて、7月22日(日)、昨年に続いて大学生とのバスツアーを企画しました。

今年は、「フットパス『泥流地帯の道』&三浦綾子記念文学館・日帰りバスツアー」で、三浦綾子記念文学館でミニシアター『泥流地帯』『続・泥流地帯』を観たあと、美瑛の風景を堪能しながら、十勝岳望岳台へ。そして、上富良野町のフットパス『泥流地帯の道』を散策しました。

北海学園大学の学生に加えて、今回は、札幌大谷大学の森雅人先生と山下成治先生の両ゼミ生も参加してくれました。学部も学年もさまざま若者たちとのバスの旅――ご担当くださった、旭川まるうんトラベルの林和寛さん、小川茉奈恵さん、ありがとうございました!

 

昼食は、車窓から緑やラベンダーを眺めながら、バス内でいただきました。ゆでたての甘~いトウキビと、旭川の果樹園のみずみずしいさくらんぼが配られ、車内は感激の声。

さらに、西神楽の「夢民村(むーみんむら)・直売カフェMuu(むー)」さんのおにぎりが、もちもちしていて、思わず声をあげてしまうほどのお美味さでした。

 

甘くてもちもち感たっぷりの北海道米の名前は、なんと、「あや」。品種の正式な名前は「彩」ですが、ひらがな書きの「あや」で販売しているそうです。

「あや」は、一般には流通していない“幻のお米”で、この「夢民村」さんが苦労の末、自家採種で栽培しているということです。

https://www.shop.muminmura.com/user_data/about-aya-content.php (夢民村「あや」の紹介サイト)

 

三浦綾子さん、「綾歌」、そして旭川自慢のお米「あや」。

まったくの偶然ですが、「あや」の美味しさと、三浦綾子作品について、学生たちからも伝えてもらいたいと願っています。

 

田中 綾

 

「仕える、事(つか)える」――『続 泥流地帯』より

三浦綾子さん『続 泥流地帯』の拓一のセリフに、こんな言葉があります。

 

「仕事というものは、何でもみんなつらいものさ。何せ、仕える、事(つか)えると書くのが仕事だと、よくじっちゃんが言っていた」

 

大正末期の十勝岳大噴火ののち、泥の中から流木を引き上げ、先の見えない復興を信じて、客土をし、暗渠を作った拓一。

そんな拓一の〈仕事〉とは到底比較にもなりませんが、「仕事というものは、何でもみんなつらいものさ」としみじみつぶやくことが、私にもあります。

 

私は、二十代半ばから“モノ書き”(文筆業)で暮らしてきました。子どものころから話下手で、人とコミュニケーションをとることも不得手なため、一人もくもくと原稿を書くという職を選んだのです。

ところが、勤務校や文学館では、授業や講演が多く、今やモノ書きよりも“話す”ほうが仕事のメインに! 実はいまだに苦手意識を克服できていないため、反省やあせりばかりで、「つらい、つらい」とこぼす日々です。

 

とはいえ、依頼があれば、どこにでもうかがいます。とくに今年は、お世話になった方々や、元ゼミ生からお声をかけていただき、苦手意識克服のチャンスなのかもしれません。

 

・5月16日(水)「文学を愉しむ、味わう―三浦綾子記念文学館の取り組みを例に」@置戸町中央公民館

・6月2日(土)「中城ふみ子―三浦綾子と同年生まれの歌人」@とかちプラザ(帯広市)

・6月16日(土)「今を詠う、恋を詠う~三十一文字にかける想い~」@恵庭市立図書館

・6月19日(火)「いま読み返す、三浦綾子」@かでる2・7(札幌市)

(以上、終了)

・9月27日(木)「『母』『銃口』 困難な時代の再読の意味」@旭川六条教会(シンポジウム)

・11月10日(土)「三浦綾子の文学世界」@苫小牧市文化交流センター

・12月1日(土)三浦綾子記念文学館について@北方民族博物館(網走市、調整中)

・12月5日(水)「暮らしを詠む~はじめての短歌創作~」@札幌市立中央図書館

 

内心、「つらい」、しんどい仕事ですが、拓一のセリフに励まされ、努力を重ねてまいりますね。

 

※高校への出前講義(無料です)の内容は、こちらから~「北海学園大学 出前講義」

http://hgu.jp.s3-website-ap-northeast-1.amazonaws.com/ebook5/delivery_2018/

 

田中 綾

歌人・鳥居さんをお迎えして――20年目の開館記念日

6月13日(水)、開館記念日の講演会に、歌人の鳥居さんをお迎えいたします。館長に就任する前から、鳥居さんと三浦文学とのつながりを感じており、今回、ご快諾いただけて嬉しい限りです。鳥居さんには、初めての旭川を愉しんでいただきたいと願っています。(鳥居さんのツイッター https://twitter.com/torii0515

2013年8月、この三浦文学館の文学講座で、「綾子さんが作った短歌」という題でお話の機会をいただきました。その最後に、「三浦綾子作品を伝えたい」現代の歌人として、実は、鳥居さんのことをお話し、当時の短歌などをご紹介していました。

 

鳥居さんは、三重県出身。岩岡千景さんによるノンフィクション『セーラー服の歌人 鳥居』(KADOKAWA、2016年)に詳しいですが、母の自死、養護施設での虐待などを乗り越え、学び直しの機会を探し、生きづらさを抱えた人々に手を差し伸べています。そのひたむきな生は、綾子さんの小説の作中人物の生に重なるところがあるように感じています。

 

鳥居さんの第一歌集『キリンの子』(KADOKAWA、2016年)は、第61回現代歌人協会賞を受賞しました。現代短歌では、芥川賞のような大きな賞です。

また、短歌総合誌の連載なども抱える多忙な中、各地で教育に関する講演も熱心に行っているそうです。

とりわけ、鳥居さんが声を挙げたのは、中学校を何らかの事情で形式的に卒業した人々に、学び直しの場を与えて欲しい、ということでした。夜間中学の門は、形式的に義務教育を終えた人々には、開かれていなかったそうなのです。

SNSなどでその問題を訴え続け、国会にもはたらきかけるなど、鳥居さんは努力を惜しみませんでした。その結果、2015年夏、義務教育修了者も、夜間中学で学び直し(再入学)ができるようになったそうです。(文部科学省「義務教育修了者が中学校夜間学級への再入学を希望した場合の対応に関する考え方について(通知)」2015年7月30日 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/shugaku/detail/1361951.htm

 

6月13日、鳥居さんからは、さまざまなお話をうかがえそうですね。

私自身が何より心待ちにしております。

 

田中 綾